チョリピッド・アイ・ランド

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ダンガンロンパV3の評価はなぜ賛否両論になるのか

 

 

巷で賛否両輪がはっきりと別れるという「ダンガンロンパV3」を正月の休みにぶっ続けでプレイしました。メルカリで安く売っていたしね!

歴代ダンガンロンパ、番外編もすべてプレイ済み、アニメも小説も読んでの久しぶりのダンガンロンパの世界。

 

2年前にファミ通読んだとき、

・女主人公は死ぬ

・過去のダンガンロンパがゲームのキャラだったとゲーム内でメタられる

というネタバレは知っていたので、そこらへんも前提に含んでのプレイ。

 

正直この二つのネタバレを知っていたからそこまでプレイして怒りは感じませんでしたが、これを知らないで発売直後に買った人が不満を持つのは仕方がないことだなぁと感じました。

でも低評価レビューが目立つ中、そこまでひどい作品ではない、むしろ素晴らしい作品だったという感想に至りました。

 

 この作品の賛否両論の問題点はどこにあるのか

 

今作のダンガンロンパにはゲーム内でも「ダンガンロンパ」というゲームが出てきます。どっちがどっちかややこしいので、問題点を説明するにあたって「」をゲーム世界のダンガンロンパ、『』を私たち三次元世界においてのダンガンロンパであるとします。

 

ダンガンロンパV3」は人気シリーズの最新作であっても、すごく賛否両論がありました。その理由として「すごくメタがあるから」。事前にこの情報を知ってて最終章をプレイして「ここかぁ~」という気持ちになりました。

どこが賛否両論の問題点か考えた結果、以下の2点をどこまで許せるかで神作か駄作に分かれるのではないかと思います。

・どこまでをメタ(設定)ととらえるのか

・作品のテーマ「嘘」をどこまで嘘にするのか

 

どこまでをメタ(設定)ととらえるのかについて。

 

問題のすべては第五章。

①『ダンガンロンパV3』で起こったコロシアイは世界中の人が見ている参加型ゲーム

 だった。

②このコロシアイのゲームは「ダンガンロンパ」という人気ゲームの最新作だった。

 

そもそも我々は『ダンガンロンパV3』を実際に今までプレイした『ダンガンロンパ』『ダンガンロンパ2』と同じ世界の中の物語だと思ってプレイするわけです。

ダンガンロンパ』の異様な世界の設定を一つの世界だと受け入れ、『希望ヶ峰学園』や『苗木誠』は『ダンガンロンパ』というゲームの世界で実在していると認識したうえでゲームをプレイしているわけです。その理不尽な世界の中で懸命に生きている『苗木誠』や『日向創』をことを時にはともに泣き、時には彼らを応援しながらその世界に没入していきます。

ここで大事なことは、現実世界で『ダンガンロンパ』のキャラクターは存在しないけど、『ダンガンロンパ』というニ次元の世界で彼らは生きている!とゲームプレイヤーが認識していることです。

しかし!今作で今までのシリーズは『ダンガンロンパV3』の世界とつながってないよ!だって「苗木誠」は『ダンガンロンパV3』の世界であってもゲームの登場人物だもの!実在しません!と今までのキャラクター、ストーリーが『ダンガンロンパV3』の世界でも実在しない、存在しないキャラクターだと公式からハッキリ言われるわけです。

つまり、『ダンガンロンパ』という二次元の世界からも「苗木誠」の存在を否定されます。

これはオタクにとって「いいんだ、嫁は三次元に存在しなくても二次元の世界で幸せに暮らしているから」と思って心を慰めていたのに、二次元の世界からも「嫁?そもそもあいつ創作物だから生きてすらいないけど?」と言われるようなものです。

これにはシリーズファンがブチ切れるのも仕方がありません。

ここだけでも不快感が凄まじいのに公式はさらに爆弾を投下してきます。

 

③「ダンガンロンパ」という悪趣味なゲームをみんなが望んでいる。

こっからさらにややこしい話をします。

ダンガンロンパV3』を実際にプレイしている我々と、「ダンガンロンパV3」を見ているプレイヤーは本来別の存在です。しかし、ゲームを進めていくうちに、ゲームで出てきたセリフがどちらのプレイヤーに向けられたものなのかが分からなくなってくるということです。

 

『最原終一』というキャラクターは『ダンガンロンパV3』と「ダンガンロンパV3」のどっちにおいてもゲームのキャラクターです。彼はこの「ダンガンロンパ」というゲームが悪趣味なものであるとし、存在を否定します。

しかし彼が実際に否定した「ダンガンロンパ」は実在する『ダンガンロンパ』そのものであり、『ダンガンロンパ』を実際にプレイする我々を悪趣味だと否定しているとも受け取れるわけです。

このゲームを悪趣味だを批判する『最原終一』にモノクマはこのように言います。

 

見ちゃいけないモノを見ている自分…

悪趣味なモノに喜んでいる自分…

そんな背徳感こそがデスゲームの魅力であり、このコロシアイの魅力であり…

ダンガンロンパの魅力なんだからね

 これは「ダンガンロンパ」のプレイヤーを指すセリフですが、このセリフは『ダンガンロンパ』というシリーズを愛してきた実際の我々にも刺さるわけです。

公式側に「オマエラはこんな悪趣味で残酷なゲームのここが好きでプレイしてんだろ?」と言われるわけです。

製作者に暗に「趣味が悪い」を言われて開き直れるプレイヤーはそこまで気にしないのでしょうが、図星をつかれたとか思っちゃったり、そこが好きなんじゃない!とか思うプレイヤーはここに腹が立つんじゃないでしょうか。

しかもなにがいやらしいかって別に製作者は我々プレイヤーに直接言ったわけじゃないんです。「ダンガンロンパ」のプレイヤーにむけて言ってるわけです。

そうともとれる を言ってくるわけです。

嫌らしいですねえ。

 

さらに追撃。

フィクションの希望だとしてもみんな、その希望から勇気をもらいたいんだ

そして、その通りの希望を見せてしまうからこそ、コロシアイは続いてしまうんだ!

そこに至るまでの僕らの悲劇を無視してっ!! 

 

「最原終一」渾身の魂の叫び。

とうとうここでプレイヤーはデスゲームの登場人物にまで非難されます。

プレイヤーの楽しみのためにキャラクターはもてあそばれているのだ!と。

ここも実際のプレイヤーが言われたととると、もう『ダンガンロンパ』のゲーム自体が嫌いになってもおかしくなくなってきます。

ドラクエで例えると、魔王本人に「世界を救いたいがために街を壊させようとするのやめてくんない?」と言われるようなもんです。

ここまでくると白けてきます。今までのゲームを熱心に共感したプレイヤーほど、ゲームのキャラクターに裏切られるわけです。

 

そもそも第五章まで応援してきた『ダンガンロンパ』の個性豊かなキャラクターも、じつは「ダンガンロンパ」のゲームのために後付けした個性。本来の「最原終一」はコロシアイが大好きな男子高校生でした、という最悪な『最原終一』のキャラクター設定を知らされるわけです。

第一章であんなに人を信じることを教えてくれた「赤松楓」も嘘、最期まで人を信じぬいた「百田解斗」も嘘。

第一章から第四章まですごく盛り上がり、感動したストーリーも全部作られた「嘘」の物語だと明かされるわけです。

 

何だこの展開、まさに不愉快、と思うプレイヤーにここで最後の公式の爆弾が炸裂します。

 

今まで「嘘」だとした設定こそ「嘘」かもしれない。

最終章の最後で最原は白金が「模倣犯としてはいい最後だった」という発言によって、実は今までの植えつけられた設定こそが嘘かもしれないという仮説を立てます。

もうこの推理のせいで今までの「ダンガンロンパ」のキャラはゲームのキャラクターであること、最原たちのキャラクター設定は作られたものだったこと、などの説が本当だったかどうか全部ぐちゃぐちゃになります。

 

挙句の果てに嘘について

受け取り方によってそれが真実にもなりうる。

嘘ってそんなもんじゃないかな。

 と述べたり、

 

たとえ嘘であってもフィクションであっても世界を変える力があるなら

それって、真実と同じじゃないかと思うんだ。

 と言っています。

とこれはつまり、今回の世界観やキャラクター設定はプレイヤーがどこまで嘘ととるのかを自由に解釈してくれ。嘘は真実にもなりえるのだから。全部受け取り方はプレーヤーにおまかせ☆と製作者側に解釈をブン投げられるわけです。

これだけモヤモヤさせられておいて答えを明示されないままゲームは終わります。

 

メインストーリーが終わったあとミニゲームが解放されます。しかし、ゲーム本編のオチで純粋な目でキャラクターを見られなくなっているので、割り切れない人はミニゲームを楽しめる心境ではないのでしょうか。

 いうならば声優の顔を見てしまった後純粋にキャラクターを見られなくなってしまう現象というか。

 

まとめ 

 

今作のテーマは「嘘」です。

物語を進めていくうえで何回も「嘘」について触れられます。

王馬小吉のキャラ付けだったり、いつかのモノクマが「嘘を否定し続けたらこの世界はどうなるんだろうね?」と閑話で言ってきたり。

今作はこの「嘘」にプレイヤーが盛大に振り回されることになり、それを許容できる人かどうかでこのゲームの評価がバッキリ分かれるのです。

加えて今までダンガンロンパのシリーズを愛してきた人こそ、製作者側にバカにされているともとれる発言を許容できるかどうか。 

 

 個人的にはここまでハッキリ『ダンガンロンパ』の売れる理由を理解している製作者だからこそこんなひねくれたゲームが作れるんだろうなぁといったところです(笑)

amazonとかの評価だけをみると悪評だけで、せっかく面白いところもあるのに遊んでみようと思う人が少なくなるのももったいないし、なにより自分もプレイしててすごくもやもやしていたので、こうやって言葉にまとめられてすっきりしました。

 

また今回こんなに悪趣味なゲームプレイしてるオマエラwwwとかさんざん煽られたわけですが、

www.deathmarchclub.com

という今度は小学生による「殺し合い」のゲームが発売されます。クリエイティブディレクターはダンガンロンパのシナリオを担当した小高和剛さん、イラストは刀語のイラストを担当した竹さんです。

こんだけ殺し合いゲームを悪趣味つっといてまた作るんかい!と思わないでもないですが、私は楽しみにこのゲームの発売を待っています!

2020年発売予定。